それは、ある日の夕方の事。

隣のうちに住むがくぽさんが、お兄ちゃんとめーちゃんに連れ去られるのを見た私達3人は、密かにその後を付けることにしたのです。



「がくぽ、顔を貸しなさい。…歯、食い縛って。…いくわよ?」



いきなりバイオレンスきました。

隣でリンちゃんが絶句。あんまり酷かったら目隠しでもしてあげなくちゃいけないかもしれない。



「まっ…待ってくれMEIKO殿!拙者が何かしたのか!?」



至極当たり前の反応。どうやらがくぽさんは理由も解らないまま連れ去られたらしい。



「うーん…めーちゃん、ここは少なくとも説明義務があるでしょー?」



お兄ちゃんがやんわりとめーちゃんを止めに入る。…はずだったんだけど。



「KAITO殿、言いつつ拳を握るのは何故だ!?」



反対側の隣で、レン君がKAITO兄怖ぇ、と漏らすのが聞こえる。

今更だけど、教育上問題がありそうな現場に私たちは来てしまったらしい。

小声で、「2人とも、もう帰る?」と訊くと、意外にも『もうちょっと』という答えが二つ重なって帰ってきた。

「だってがくぽ兄がなにやらかしたのか知りたいし」「結構面白そうな展開になりそうだし」

家の末っ子たちはどうも好奇心が強すぎるらしい。まぁ自分も否定できないけど。



「――言い逃れはさせないわよ、」



めーちゃんがそこで息を吸う。

私達3人も、息を飲んでその続きを待った。



「…アンタ、ルカと何処までいってるの」



えぇええええぇえええぇええ!?!?!?!?

何、そういう展開ですか!?

隣の2人は一瞬放心状態になっている。ようやく口を開いたかと思えば、

「…ぇ、がくぽ兄、ルカ姉とどこかに行ったの?」「あぁ、買い物とか?ルカ姉今帰ってきてないし、どこかに行っちゃったとか、」

「そうそう、ルカ姉携帯持っていかないし、」「連絡付かないから心配してるのかもなー」

……

『そんなわけないけどね!!!!!!!』

…あぁ、やっぱり2人を連れてこなければよかった。



「!?ルカ殿…と…!?」


「あー…めーちゃん、この反応はアレだね、結構な所までいってるねー」



相変わらずお兄ちゃんの顔はいつもの笑顔だけど、言ってることがえげつない気がする。

確かにめーちゃんの質問の後のがくぽさんの顔は、心なしか赤くなっている様な気が…しなくもないかもしれない。

っていうか、結構な所ってどこ!?!?



「KAITO殿!勝手にそのようなこと…」



そうだよ、お兄ちゃんが勝手なこと言ってるだけかもしれないよね!

2人とも早とちり意外と多いしね!

…っていうかむしろそうであって下さい、お願いだから!



「本当なの?…嘘吐いたらどうなるか解ってんでしょうね?」



脅し!?これは脅しだよめーちゃん、そしてそんなに深入りしないで!

「メイコ姉酷くね?」「これ、違ったらどうするんだろうね」「いや、違わねーかもよ」「えぇえぇ、レン、それは無いでしょ、あの2人に限ってー」

言いたい放題じゃん、もう。順応性高いって誉めるべきなのか、これは。



「…言わねばならぬ、のか…?」



アウトーーーっ!!!!!!

2人が目を見開く。「マジで!?」「いやぁ…がくぽ兄そうくるの?!」「ミク姉、これはアウトでしょ。」「でしょ?!」

…うん、ミクもそう思う。



「じゃあ待って、質問変えるよ。がっくんさー、ルカの事、好き?」



唐突なお兄ちゃんの質問に、こちら側が驚く。

「えーっ、何その質問!」「まさかKAITO兄もルカ姉のこと好き、とか?」「だったらメイコ姉居ないでしょ」「いや、案外メイコ姉も…」

適当なこと言うのやめなさい。

『…はい…』



「…無論だ。嫌いになどなる理由が無い。」



「これはまた意外な答えですね、レンくん、ミク姉。」「いやぁ、ここら辺はがくぽ兄が鈍いっていうかそういうことでしょうリンさん、ミク姉。」

…っていうか既にルカちゃんとがくぽさんの関係は普通に受け入れられてる感じじゃない?

「だって何かもうそんな所でのたうってる場合じゃ無いじゃん、これ。」

ごもっともだね、レン君。



「あら、正直ね。…なら聞くけど、どのくらい?」



どのくらいって何。どのくらいって。

「メイコ姉キレてんの?」「っていうかなんでこんなことに?」

2人が言うのも当たり前で、めーちゃんもお兄ちゃんも雰囲気が違う。

これは違う意味で教育上良くない方向に進んでいく気がする。とくに2人にとって。

「…2人とも、もうこの辺でこっそり帰ろう?」そう言うと、

『何いってんのミク姉!』こちらも凄い雰囲気で言われる。

「今が一番盛り上がってるところでしょ!?」「ミク姉ダメだって、怖気づいちゃ。がくぽ兄がなんて答えるか知りたくないわけ?!」

あ、もうダメだ。…いや、それでもミクは頑張ったよ?お姉ちゃんとしての責任はもう果たしました!でも2人が帰りたくないって言ったんです、だからミクは悪くない!



「どのくらい、とは…?量で量れるほど、軽くはないつもりだが…。」



「マジで?」一番最初にそう零したのはレン君で、リンちゃんも直に「うわぁ…」と漏らす。

「こっれは…聞いてる方が恥ずかしくなんねぇ?」「レン、顔赤いよ」「リンもだろ」『…ミク姉も赤いけど』

当り前じゃない?



「…あー…うん、そっかー…めーちゃん、やっぱりこれは時間の問題だー…。」


「そうね、よーく解ったわ。…がくぽ、用意はいいわね?」



なんでそうなるの?



「あ、俺からも一発ねー」



お兄ちゃん、そこは止めてよ!

え、本当に?「うわっ」「痛ったぁ~」



「―――っ…、何故だ…っ!?!?」



…ご愁傷様です、がくぽさん。本当に。

「帰ろっか…リンちゃん、レン君。」「…うん…」「…てか、俺今の3人の会話のどこにがくぽ兄を殴る理由があったのかが解んねぇんだけど。」

「私も解んない。…ミク姉は?」

…大人の事情って奴がきっとあるんじゃない?

「そうだよねぇ…ミク姉も解んないよね…」「大人って複雑過ぎるよなぁ…」



       

―――あ  の  子  が  好  き  だ  と     う  の  な  ら

       





「めーちゃーん、あれは痛いよねー。」


「よく言うわよ、アンタはさらに手加減無かったでしょ」


「いやぁ、ルカは愛されてるねー。」


「アンタの言う通り、フォルダ変わるのも時間の問題ね。」


「そうでしょ?」


「にしても人間って変わってるわよね。女の人の結婚相手は一発殴るのが常識だなんて。」


「本当はそれ、父親だけだって知ってた?」


「別に良いんじゃない?アンタにとってもアタシにとっても、ルカは大事な妹でしょ、がくぽには勿体無い位の。」


「そうだねー」


「…そういえば、アンタ何であの2人がそういう関係だって解ったのよ?アタシ全然知らなかったし解んなかったんだけど。」


「えー、めーちゃん疎くない?昨日ルカ帰ってくるの遅かったよねー。それで、今日の朝のルカの様子…昨日がっくんと収録終わった後、何かありましたって言ってるようなもんだったじゃん。」


「…あいつもう一発殴ってこようかしら…」












「…だってよ!ちょっと信じられなくない?」


「いやぁ、甲斐性無しでも無かったんだな、がくぽ兄は。」


「でもどこまでいったのかって、最後まで言わなかったじゃん。案外キス止まりかもよ?」


「でも結婚って単語でてきちゃったら…」


「…じゃあミク姉、行こう!」


「え、何処に…?」


「決まってんじゃん。ルカ姉は俺らの大事な姉でもあるんだよな?リン。」


「そうだよっ!だから…」


『殴りに行く』


…教育上良くないけど、ミクはちゃんと行かないでっていったよ?…心の中で。だからミクは悪くないので、行ってきます!







そしてその日の夜も、ルカちゃんは帰ってくるのが遅かったのでした。



それから、それに気付いたかなり酔っためーちゃんががくぽさんの家に乗り込もうとしたのは………また、別のお話。





初VOCALOIDでした。そしてギャグって言えばギャグですね。初めて上げました。
オチは無理矢理感が否めませんが、続くかもしれないし続かないかもしれない。
「一発殴らせろ!」みたいなノリで。別に、がくぽが気に入らないとかそういう事じゃなくて、マスター辺りがまた要らんことを吹き込んだとかそういう。
ただ一つ言えるのは、かの2人は何所までいってるのかって、そりゃあそういう所までいってるんじゃないですか←
ただ、”その日の夜”ルカが遅かったのは、彼のせいかは分かりません。…あれ、続く感じになってる。
KAITOが気付いたのは、本当に些細な所だと思う。どことなく何かいつもと違うよねー、あーそっか、昨日なんかあったんだー位で気付くのがKAITOじゃないかと。
そして酒を飲み過ぎると絡み癖が酷くなるのがうちのMEIKO姉さんです。
訊いていい範囲とか、言っていい範囲が解らなくなるので、地雷を踏みまくる。けどMEIKO姉さんだから答えざるを得ない。
そして次の日酔ったことは忘れても、入手した情報だけはしっかり覚えているという。
そんなのが次に書けたら良いな、と思いつつ。