※超捏造設定:ハスタとサクヤが傭兵で敵同士、かなり痛いし暗いし救えない。若干グロも入る。しかもサクヤ嬢は喋らないアレ
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俺は本当に、心の底から我儘なのである。
だからその瞳が俺を見ない事にも腹が立つし
その瞳が見つめた例えば味方兵士(俺にとってそいつらは敵だからなんら問題は無い)だとか、
敵兵士(無論俺にとっては味方、の)だとか、
更にはあんなに愛していた筈の戦場すら彼女がその地面を見つめるだけでそれはそれは酷く嫉妬してしまって
嗚呼、俺ってなんて純情なんだろうと思うのだ。
人とは、人に固執できるものなんだと思った。
そして固執は、とてもとても心地好い。
赤い戦場に舞う黒い髪はとても美しかった。
白い肌に散り、黒い髪を濡らしてより一層色を濃くするその返り血になりたいと考えた事もある。
それが目の前にあるのだ、この興奮をどう表現すればいいだろう?
俺はとても悩んだ。
戦場で人を切りながら、ずっとずっと悩んでいた。
そうして出した結論は、なんて簡単なことで何故今まで気がつかなかったのかと自身を疑ってしまう様な程明快で
そうだ、欲しいなら手に入れれば良いだけの事じゃあ、無いか。
と。
純粋に考えて、彼女よりも俺が弱い訳がない。
そしてそれは正しい。
本気になった俺は自分で言うのもあれだが、自分の欲求を満たすにはなんとまあ事欠かない位の力を持っていると思う。
だから、こんな風にほとんど使わない拷問部屋なんか使って、かつ滅多に帰らない自宅になんか入り浸って、至極満足しているのだ。
「気分はどうだい?」
無駄に金だけは持っていた親の残した家はそれは豪奢で、
恐らく彼等を殺してしまってから一度も使われた事の無かった大きなふかふかのベッドは彼女をその上に載せれば大分と沈み込んでしまうほどだった。
彼女は返事をしない。けれどその眼は、戦場に居た頃と何も変わらない。
それから1年たっても2年たっても、彼女は俺を見ない。
俺を見ているようで何か他の物を見ていた、それが彼女の戦場での”瞳”。決して俺を見ない、俺を嫉妬させた瞳。
彼女に俺を見て欲しい。何故ならこんな気持ちになるのは彼女に対してだけなのだ、
だから今でも戦場に行っては血を浴びたいなとも思うし皆殺しにはロマンを感じるしさくさくと槍に突き刺さる肉の感触もこの上なく愛している。
だから家の地下にある拷問部屋には未だに彼女の腕と脚を切り落とした時の血だけしかこびり付いていないのだ。
けれど、気付いてしまった。
愛する彼女を手に入れた筈なのに、心のどこかが痛い。
戦場から帰れば家には必ず彼女が居て、俺を待ってくれている。
そして無条件で俺を受け容れる。
最初はそれが幸せだったはずだった。なのに、何かが違うのだ。
そうして気付いた。
俺が愛していたのは戦場の彼女なのだ。
戦場で舞う彼女の姿は、もう幾度俺が戦場に行っても見ることはできなくて
俺が恋焦がれたあの肢体にはもう触れることすらできない、だって俺が切り落としてしまったのだから。
それに気付いた時、俺は絶望した。
せめてもの救いは彼女の瞳だけ
未だに俺を見ないその瞳が、かつての俺の望み通りに、俺を見てしまったらきっと
きっと俺は、彼女を、
金色の目が俺を映すまでは恐らく俺は彼女を愛していられる
だからどうか、俺に彼女を殺させないでください神様
俺の彼女をそこら辺の石の様な人間と同じ価値にしないで
槍の先を握りしめ、溢れる血をそのままに彼女の髪に触れる。
濃い黒の髪に顔を埋めれば、
懐かしい香りがそっと、鼻の奥をついた。