いつか、忘れてしまう。 永遠に続く記憶など、無いに等しい。 それが、怖い。 「お前の最期の顔、ワタシは知らないヨ。」 頑なに拒まれた面会 それは最期でさえ、例外ではなかった。 逝ってなお 灰になっても 「最後に会ったのはいつだったか、お前覚えてるカ?」 二ヶ月、二ヶ月待った。 会いに来るな、と言われて 暫く此処には来ないと宣言されてから 「土砂降りで」 その時見えたのも俯いて動く口だけ 覗きこもうとして、背を向けられて。 濡れた髪の色と、血の気の無い唇の色。 気付いてはいたのに 言わないでいてあげたのに 「お前らしくなかったヨ。」 それでも信じていたのに 信じた私を馬鹿にさせて あの時「またネ」といった私に 何も返してはくれなかったけど あの時「また」なんて言わなかったら その顔をあげて、最期の顔を見せてくれていたの? 「お前らしく、ない。」 今の私が覚えているのは あなたが背を向けたときのあの場所の土の匂いと あなたが骨になる時の煙の匂いと あなたがもういないという事実だけ
私はいつか、あなたがいた事を 忘れてしまうかもしれない。 だからその恐怖に殺されるその前に、私は私に殺される 「また」と言った思い出と約束を 忘れない、そのうちに。