それは、失ったことに対する涙なのか



なにも知らなかったことに対する己への憤りの涙なのか



私にはそれさえも解ってはいない。







…元を辿れば赤の他人


そんな人は大勢いる。


それでも、その中で唯一無二の存在なんて見つけられたら


赤の他人だったことを忘れられるのかもしれない。





「幸せだった」


そう言えば聞こえはいいけれど


貴方と会えたことを


「幸せだった」


そう、思ったことは一度もない。


だった、なんて


なんて淋し過ぎる過去形でしょう?





貴方の死を代われたら


そう思ったけれど


貴方の代わりなんてできるほど、私が強くないことを知っている。


貴方にしかできないこと


それは貴方の死さえも含めて




私の知らない所で、私の知らない物は動いていく。


私の知らない所で、私の知る物さえ動いていく。


小さな世界、だから私は貴方の死んだ時でさえ


日常を過ごし、変わらぬ世界、と錯誤し


そして今ここに居る。




たとえば私に


貴方の強さがあったなら


今目の前で眠る貴方は


ここで私の死体を見ていましたか?



       

―――そ  し  て  た  だ  非  力  を  呪  う

       




非力を呪っても



無力を嘆いても




もう貴方が戻ってこないことくらい





解ってはいるけれど。