生きる覚悟を問われれば、それに対して「いつ死んでも構わない」と答えるだろう


死ぬ覚悟を問われれば、それに対して「いつまで生きれようと、構わない」と答えるだろう。



きっとそれが、己に出来る最後の事でしかないのだから。









世を厭っていた。


生きていく価値など無いのを理解したのは何時の事か


それは、己にも、この世にも。


今でもその考えは変わることなく己の中に住み続ける


…むしろ、今だからこそその考えは増しているのかも知れない


この世の闇、人間の心に背負う罪と咎、それらを喰らっていくうちに取り込まれ狂っていく自分自身の心に恐れ、死にゆく


それを数多く目にし、感じてきた己の手にした現実は


されどこの道を選択した


心を喰らう事しか出来ぬ獣の運命と、理解してはいても。









…汚れている、そう思っている。


この手も、体も、そして存在すら。


触れたもの全てを黒く、深く汚すこととなろう闇


それは負の感情を餌にする怪物を己の餌としてきた代償


それを誰より理解していたからこそ、白く美しい、静かに眠るあの少女に己は


最期まで、手を伸ばすことは無かった。







その感情は慈しみか愛しさか


触れることすら許されぬ少女に、己が抱く感情とは何か


全ては既に闇に消える


少女がこの目の前で、闇に溶けていったように


最早それを知る術は無い


少女が例え何時までこの冷たい床の上に横たわっていようとも、もう二度とは目を覚まさぬように








FORTの中が、紅く染まる


斬り付けられた肩の痛みは、麻痺していて何も感じはしない。


いつかこうなることは解っていたはずだった


対立組織が無いわけではない


精神操作と、実弾と、刃が飛び交う。


少女は喧騒の中で赤の海につかったまま、その白い肢体をゆっくりと紅く染めていく


その姿は、きっと







       

―――S  A  C  R  I   F   I  C  E  

       






終息した乱闘、転がる躯の数々


「まるで、生贄の様、だな」


所長である男が少女の胸のペンダントをとる。


少女の能力で、逸早く敵の存在に気付いたFORTの損害は、ほぼ無いに等しい。


流れ弾に当たり、失った少女を除いては。






紅が溜まる床の上




抱き上げた少女の体は綿人形の様に軽く、陶磁器人形のように脆く繊細で










その残る心だけでも、喰らえたら、と









………ただ静かに、少女に口付けた。









後書き

ルクスはどうも補完したがりなもので後書きが多いです。
自分で思うけど、世界観が難しいからかな…。。。
というか自分の描写力だって解ってます。ごめんなさい… o r z
今回はまぁファランクスとフォートあたりで一つ戦争みたいな。
精神操作とかって怖いよね。隣の味方が一瞬で敵でぐさり、みたいな。
でもFORTにはナツキ嬢がいらっしゃるんで、敵が来てもささっと対処できちゃいそうではある。
…それじゃあうちの小説になんないじゃん。ってなことで流れ弾の登場だったわけですが。
最初の劉の独白では戦争設定になんかするつもりなかったんだけど、”サクリファイス”って単語が出てきたからそれじゃあ。って。
”サクリファイス”っていうとナツキを劉が庇って~な話でもよさそうでしたね。逆もあるかもしれない。そしたら”犠牲”って感じじゃないのか。いつか書こう。
個人的にはSACRIFICEって単語の響きが好きなのでちょっと満足。
テレビか何かで聞いて、「かっこいい!」とか思って英和辞典使って調べたら意味は「犠牲」だったっていう。
複雑な心境ですね、でもそれもこの小説のためだったのかも知れない(ぇ