だから私はその夢を
最期の果てまで、愛そう。
最初に会ったのは、夢の中だった。
優しく微笑む彼の顔を、忘れることはないだろう。
理由は要らない
これは神が見せた天国の姿なのだと思った。
目の前で微笑むのは天使で
たとえ羽は無くとも、私をこの世から救ってくれるはずだと
…その期待は見事に、異なっていた訳だけれど。
淋しそうな眼をしていた、猫だった。
本来、猫とはそういう瞳をしている生き物なのかもしれない。
けれどあの時の私には、その猫はまるで
全てをどこかに失くした私と同じのように思えた。
わざと車道に出て行ったようにしか思えなかった。
だから私も同じ道を辿ってもいいと思った。
そして私は、彼と出会った。
死ぬはずだったことは、今の私も理解している。
彼は私を利用しただけなのかもしれない。
彼の傀儡、それだけの価値なのかもしれない。
生きたい、と思ったわけではなかったのに
私が今ここに居るのは、生きたいと願いながら死にゆく人々に失礼な気もする。
それだけに、この指に光る銀の指輪が重い。
それでも、彼のために生きられるのなら良いと
そう思うことはその人々に許してもらえるだろうか。
始まりは全てあの夢から始まった。
けれどいつかそれが夢で終わるのが怖い。
今生きているということ
仲間ができたということ
かけがえのない、頼れる2人と出会えたこと
そして何よりも
彼を愛しているという事実さえ
夢となって一瞬で掻き消えてしまうのではないか、と。