ただ、呆然と、立ち尽くす。
そんな表現が自分に出来るようになるなんて
思っても見なかった。
非情で非道な機械音
それさえも、不規則になっていく
繋がれたたくさんのチューブ
あとどれくらい、貴方を此処にとどめておける鎖になってくれる?
目の前に在る物さえ、まともに認識できないなんて
そんなこと、ある訳無いと思っていた。
世界が反転する時でさえ
こんな事になるとは思えないのに、
――アナタが危ない事に足を深く入れてるってことくらい
ハルにだって分かってたんですよ?
…けど、アナタのやりたい事を止めるなんて、そんな無粋な事、しちゃいけないって
分かって何も言わなかったんです。
少なくとも、ハルの今思っていることを、わざわざ口にするまでもなく
アナタは分かってくれていると思ってました。
「 死なないで、下さい 」
貴方だけに、聞こえるように
貴方だけに、聞こえればいい
それでも耳元で囁いた言葉さえ
もう届いてはくれないのだろうか
ねぇ、言うまでも無かったはずですよね?
アナタはまたハルの前で
笑って…くれますよね?
こんな事になると分かっていたら、
私はアナタに何も言わなかったことを、
失敗――――
もう戻れない失敗だったなんて
思うことも、なかったのに。