深く暗い海の底



たゆたう時間は戻らない



沈んだ命は戻らない





もう二度、と。











脳裏に焼きついた姿が消えない


胸元に光る黄色、何時でも核心を突く声、


逃れることのできない瞳が。


それを喜ぶべきとは知りつつも


―――――もう現実にそれを見ることができなくなった今


それでもそれが出来るほど器用ではない己の現実は


その姿がちらつく度、悪態を吐くことしか出来ない。 











何時から、そして何処から


己はこんなに弱くなったのか


人一人すら満足に忘れられない


ましてやもうこの世に奴は居はしないというのに。


忘れるようにと


写真も繋がりのある品も全て焼いて捨てた筈なのに、


一番捨てるべきものが捨てられない


一番捨てたいものが捨てられない


そんな己に反吐が出る。


”思い出”、そんな大層な物でさえ無い頭の中の幻影


それなのに”忘れられない”?










死んだ者を記憶から消す、そこまでは求めない。


けれどこの幻影は何時までも


己を縛り付けるように捕えて離さない。


戦場に生きねばならない者が死んだ者に捕らわれて死ななければならないとは


何と滑稽で、愚かな。










お前だってそれを知っているはずだろう?


なのにどうしてお前は


深く暗い海の底のような場所


手の先さえ届かない


目で見ることさえ叶わない


そんな所へ勝手に墜ちておきながら


俺を苦しめ続けるんだ?










       

―――深  く  暗     海  の  底  

       




そこへは何も届かない



そこへは何も届けない




全てを照らす日の光さえも









「愛して、いたんだ。」








呟いた微かな言葉さえ







もう二度、と。




ちょっと注意書き的あとがき

リボラルです。希少価値高いなんてもんじゃなく。
かなり前の話になりますが、「昔はお前のことをお前以上に~」
のリボーンの発言で嵌りました。
コロラルが公式だと思うのでありなしでいうとアレなんですが、
まぁこんなのもアリかもねっていう軽い気持ちで見ていただければ幸いです。