唐突に、それは訪れた。


まるで地獄のような、と言ってしまえば簡単


けれどそれさえ全てを表してはくれない。










すべてが始まったあの日に


何度戻れたら、と願っただろう。


己の世界を変えることを決断したあの日の自分ほど


今の自分にとって恨めしいものはない。


愚かだった自分


それを生み出したのも己自身


もう二度と戻れないあの世界を


こうも希うとは。






苦しみは知ってきたつもりだった。


誰よりも。


けれどそれはただの誇大


何より大切なはずの人の命が


この手をすり抜けた瞬間


愚かな自分は


やっと己の罪を知る。





世界の闇になると決めたあの日から


後悔などしなかったはずなのに


もう戻れない世界と、己の決意が


それを許さなかった筈なのに


あの世界から君を攫った己が


君を失ったことを


君をこの手で守れなかったことを


この世界に己が染まったことを


悔わないことを、許さない。




       

―――過  ぎ  去  り  し  日  常  に    

       




君の声が、好きだった



君の笑顔を、愛していた



君の全てに、恋焦がれた




この世界を知る前から、ずっとずっと





教室の椅子が、黒い革張りのチェアに変わり


テスト用紙に向かって握ったシャープペンが、万年筆に変わって





あの日が、あの時が






過ぎ去ったことを知っても、なお。