後悔はしないよ、それは保障する。


だってちょっとのスリルは味わいたいもんね。


それに皆は優しすぎたから。




でも解ってる






君ならちゃんと、叱ってくれる筈だってことくらい。











耳を破壊するかのごとく、その音はそこにいる全てのものを揺らした。


残されたものは折れた巨木と瓦礫と


それをぼんやりと見つめては、「あぁ、生き物なのに」と考える。


これを知っていたら、君はどうしただろうか。


必死でこれを止めようとした?





……もしかして、あの日のように自分を賭けて。












その報せを聞いたのはその日の夕暮れだった。


大きな、紅い絨毯で敷き詰められた部屋の中でただ孤独に


今と同じように、それでも違うのはそれがどんな喧騒より私を恐怖に陥れたこと。


銃声と爆発音


それに慣れていないことを願い


それでも最初より恐怖が薄れている自分に、戸惑いを感じる。


10年という月日はここまで人を変えるものだろうか


銃弾が飛び交う、異様な雰囲気の中でも笑えるほどにまで。


現実とはされどこのように小説より、幻想よりも奇であり


そして何より残酷な。


異なる世界へ来ることを


承諾したのは自分自身だというのに


笑えた日々を、それでもあの日が壊していく。







「ツッ君、」






違う、この世界へ呼んだのは彼。


私の笑顔を奪ったのも


私を独りにしているのも


あの日を作ったのも、そう。


全て君のせいにしてしまえばいい


ねぇ、君は優しいからそれすらも許してくれてしまうのだろうけれど。







あの日、君は静かに目を閉じて


『愛してるよ』


こっちまで恥ずかしくなるようなくらい顔を真っ赤にしてそう言って


そして屈託無く笑って


いつの間にか凄く大きくなった背を私に向けて。


…その背を、もう一度見ることはもう叶わない


どちらのものかも分からない流れ弾は


物陰で震える見知らぬ少女を庇い反応の遅れた彼を貫き


石畳の地面に音を立てて落ち


今、私の手の中にある。







掠め取ったダイナマイト、その導火線の長さは今まで彼と過ごした時間の長さ


それなら私は一度それをリセットして


また新しく彼と時間を紡いでみせる







「ちょっと、出かけてくるね」




誰も止めなかったその言葉


隠し持ったダイナマイトは湿気てしまうくらいに汗に濡れていて


綺麗な銀色のライターは、それよりも綺麗な橙色の炎を生む


君なら小さな私の火遊びを


ちゃんと私の目を見て


叱ってくれる筈だよね?





       

―――少  女  の  火  遊  び

       






火のついた筒を投げると、炎はくるくると回る。



ねぇ、叱っても良いよ。



どんな怖い顔で、どんなに声を荒げても良い





だからお願い、私を止めないで






そう、




誰より優しい君ならこれをきっと





わかってくれる、よね。









ツナ京企画様に参加させていただいた作品です!
よりによって死ネタ……!
一人浮いていそうで怖いですが、
このような素敵な企画に参加させて頂いたことを本当に光栄に思います。
こんな作品でも愛は十二分に詰め込まれているので…

本当に有難うございました!!


by  白虎