君のその笑顔を愛した
今目の前で輝く、それを
嗚呼
俺は幸せ者だ。
冷静すぎる、と怒り飛ばされてしまいそうなくらい俺の心は落ち着いていた。
流石に心と体が同じ訳にはいかないようで
ありありと分かる体温の低下に少したじろぎ
けれど死とはこんな物なのか、と拍子抜けする。
むしろ騒々しいのは己よりも周りで
否、皆一心に冷たい機械音に耳を傾けて声など一切無いけれど
それでもその表情からその面々の心の内にある思いは読み取れた。
もしかしたら、俺に気を遣っているのかもしれない。
話すことも出来なくなった俺の瞳と耳は未だに正常に作動し続けている
ここで何か言えば、俺に影響を与えてしまうんじゃないか――
即ちここに居る誰もが
俺をこの世から追い出す言葉は言えれど
俺をこの世に留めて置けるようなことは言えない。
それが現実
希望も未来も無い、己の。
死ぬことが怖くない、と言えば嘘になる。
このまま目を閉じてしまえば、この光景に二度と会えない事が
このまま鼓動が止まってしまえば、ここに居る全ての人物にもう会うことが叶わない事が
己の死よりも辛い痛みがあることを、苦しい思いがあることを、死を知る今なら解れる。
しかし愛する人に二度と会えないことがこんなにも俺を後悔させるとは
誰より愛しい彼女の声が、こんなにも遠くなるとは
死を知る今なら解れるけれど
それでもそれが遅すぎたのかもしれない、と思ってしまう
今でも愛することに変わりは無いが故に。
だから、俺は。
「愛してる」
言えない代わりに
言えなかった代わりに
言えなかった事を後悔した証に
なぁ、お前は俺のこの気持ちを汲み取って
俺の最後を飾ってくれるよな?