この仕事向きの人間なのだろう、と直感的に思った。
的確で冷静、理解力も洞察力も優れている、などという素晴らしい評価と共に
彼女は、やってきた。
「よろしくお願いします、今回御一緒させて頂く栗藤です」
「話は聞いていますよ、こちらこそ宜しく御願致します」
確かに、無駄のないヒトだと思わずにはいられない。
優秀だと、誰もが認めるような
認めざるをえないような
「!っ…」
小さな部屋に、機械音以外の衝突音が響いたのはゲームも様々な展開を迎える中盤に差し掛かったころで
ふと振り返ると、ドアの前で座り込む彼女がいて。
「…、申し訳ありません…」
およそ、モニターに見入っていて閉まるドアに気づかないままぶつかりその反動で、といったところか。
こちらを見る彼女の表情は読み取れないが、心なしか黒いサングラスと白いマスクの隙間からのぞく素肌が紅い。
「…見て、ましたよね…」
「いいえ、何も。」
直ぐにさらりと返事をし、再びモニターへと向き直る。
「ぇ…?」
「さて、栗藤さん。このプレイヤーが鍵となる罠を張っているようですが…分かりますか?」
彼女は一瞬突然の質問に戸惑い、しかしハッとしてすぐに
「…彼は、柔和な顔つきと態度ですがそれは演技です。ですから、それに気がつかないプレイヤーは次のターンで…落ちるでしょう。」
「それでは、それが現実になるかどうか…立ち上がって、結果を見ましょうか。」
手を差し伸べると、彼女は再びハッと、
…自分の今とっている体勢に気付き
先ほどよりも幾分顔の紅さを増して、ふい、と顔を背け、
「お気遣い感謝します、しかし…必要ありません。」
そう言って毅然として立ち上がる姿が、何とも言えない。
少し、意地悪をしすぎたかもしれない、と心の中で微笑んだ。
「私が見ていない、というのは本当ですよ。」
ゲームは終了した。
結果は彼女の狙った通り、最後まで笑顔の仮面を貫き通した策士がすべてのプレイヤーを騙し。
そしてまた、敗者となった負債者が増えた。
会場と繋がる映像を遮断しながら、彼女に言う。
「…何のお話、でしょう。」
「何でもありません」
変わらない声色の中に、少し恥ずかしさが混ざっているのに気づいて
自分よりも年若いその女性が、たまらなく愛おしくなった。
…否、なった、ではなく。
それを再度感じた、というのが恐らくは正しいのだろう。
彼女はディーラー達の中でも有名な敏腕補佐であり、その姿を何度も見掛けた。
長い黒髪が、とても美しく。
愚かにも、その感情が湧き上がり、自身を嗤い、
けれど、今回確実に分かってしまった事実は、受け入れるべきだろう。
「また、御一緒できたら嬉しいです」
彼女の言葉にふと、逡巡して、
「私も、ですよ。」
「貴方のように優秀な方と共に仕事ができることは、この仕事について良かったと思えることの一つです。」
「例えば、仕事熱心で、前が見えなくなってしまうような方となら尚更。」
「…レロニラさんは、本当に意地の悪い方ですね。」
にこり、と、サングラスの奥の瞳が本当に嬉しそうに微笑んだ気がして
「いつか、また」
「…えぇ。」
そしてまた自分は一つ
嘘を、増やした。
もう君と2人きりで仕事をすることはないでしょう
巧妙な手口は、自分の得意とするところ
幸いにも、優秀な君は暫くは私の補佐にまわっては来ません。
それが自分の自分への戒めなのです
これ以上君の傍にいれば、自分は自分の立場という許されるべき範囲を超えてしまいそうですから
ですから、私は。
仮面の下がどんな顔をしているか、自分でも分かりはしませんが
ただ一つ、もう破ることのできない条件を、私はいつの間にか持ってしまったのです、それを知らぬふりをしてはもういられません、
そうでしょう?
ただ一つ、私に許された我儘は最後まで取っておかなければいけませんし
どうしても、耐えられないくらいに君が欲しくなった時の
そのために。
――――――――「今回のゲームの補佐は、私が指名しても?」
…ゴホン。ゲホン。ガッ…ゴホ、ゴホッッ!!!!
お久しぶりです、白虎です。
しばらくぶりの上げ一番目にまさかのレロ栗だなんて誰が思うだろうか、いや、誰も思わないだろう(反語)
もっとレロニラさんは大人だ!とか思ってたのに、いつの間にかこんなことになってた。
っていうか最後のセリフが書きたかっただけ。
悪い大人の意味が違う。もっと違うはずだったんだorz
栗藤さんは完璧だけどちょこっとドジっ子属性も持ち合わせてると良い。
ツンデレだと尚良し。
そして栗藤さんはドラマ版のエリー様の代わりとしてディーラー皆に愛されればいいよ。
っていうかドアに激突ってどんなだよ←
同時あげしたフォル栗のが大人じゃねぇかという指摘はごもっともですがしかし管理人はレロニラさんが一番格好いいので
大人の格の違いをきっと何時か見せてくれるはずだぜ遺影(←既に変換間違いともいえない
続く…?