気付いていた 解っていた …それを認めていなかっただけなのだ、と言えば 許されるのだろうか。 見てはいけない、 来てはいけない。 だから私は、此処に居る。 言い訳のような呟きは空気を震わせ そして自分の心を震わせる。 居るべき場所はもう、 此処しかない。 見てはいけない、と貴方は言って 来てはいけない、と貴方は行ってしまった。 もう何もなす術はなく 貴方の言葉を忠実に守るより他はなく だから私は此処に居る。 深い闇を背負い行く 貴方に何も出来ぬまま。 血の匂いが鼻を突く 漆黒のローブが、紅に変わっていく。 混ざり合うのは赤と黒 ルーレットのような配色、 それを羨むのは罪でしょう? 全てを悟っていた、なんて言い過ぎるだろうけれど 貴方への想いも、その結果も 私には解っていた。 杖が手から滑り落ちる。 大理石の床が音を立てる。 光に居続けろと言ったのは貴方 闇に居る貴方を殺せば 貴方の言葉を守れたことになる? ねぇ、引き金を引いたのはどちらかしら?
残酷な言葉 残酷な行動 それでも構わない 貴方の最期を、私だけが 愛せたの、だから。