神と人間の間を引き裂いたのは たった一匹の、蛇だったという。 おそらく、それは予期せぬ出来事だったに違いない。 それまで読んでいた厚い本を閉じる。 たまには魔法世界以外の本も読んでみるものだ。 黴臭い、黄ばんだ本。 誰も手にすることのないまま、きっと長い年月が経っていたのだろう。 2人の人間と、神。 たった一匹の蛇のせいで、それらはきっと 運命を大きく狂わせられたに違いない。 まとわりつく髪を掻きあげ、図書室を出る。 イヴ、貴女は馬鹿よ 神の忠告さえ守れないくらい。 蛇の誘惑に負けてしまうくらい。 けれど、 「人のことは言えないわね」 呟きは、廊下に吸い込まれる。 夜、しんと静まった廊下 遠くから聞こえるのはあの人の足音 ランプさえ持たないで 近づいてくるのがその証 そそのかされて食べた実は イヴに知恵を 与えたけれど
私の側には金色の蛇 青い瞳と甘い言葉 私が食べたのは禁断の果実 けれど私は悔やまない たとえそれが――― 狂った運命でも。
実はイヴをそそのかした蛇はアダムの前の奥様であるリリスだって説もあるらしいですね。