信じるものがあれば、人は強くなれるのだという。

だから、人は神という偶像を作り出すのだろうか。





「…くだらないな」

「――ドラコ?」

呟けば、隣の男が眉をひそめてこちらを見た。
闇夜、抜け出た城の門は遥か遠くにある。
たった数時間前
この手で、人を殺めた事実
けれど今この心を支配するのは、それ以上の深い感情


ふ、と心の灯を消す


「何でもありませんよ、先生」


心を閉ざすこと
それは、自分の得意とする所らしい


まさにそれは
闇の素質とでも言うべきか


「ならばいいが…」


何かを隠していることは解られてもいい
その中身さえ、隠し通せるのなら


今この場に神がいるというならば
この心も、見透かされているのだろうか




人を殺したこの手
闇を選んだのは己



だから自分は弱いのか
全てを信じることを拒んだ結果


               信じれる物はもう無い


――栗色の髪が脳裏を揺れる

                
               それが、結論にして結果なのだと


――なんて硝子の靴よりも脆い感情



       

―――神  の  御  許    

       




神を信じることは無い



偶像は偶像でしか無いのだから

信じる物を失った自分にとっては




ただ、最後に一度


この気持ちだけは、信じるべきだったのだと



もう会える事も無い君に言えれば



「本当に、くだらないな」






その声は、自分への嘲り。


全てを失った、自分への。





プリンスその後なイメージで。
自分は殺してないけど、負い目は凄く感じてると思います、彼は。