人として最低なのは、約束を破ること。




石造りの階段を、下へ下へと降る。

窓から差し込んでいた暑い位の日差しも、この地下牢へは届かない。


この場所を、毎日彼女はどんな顔をして通っていたのだろうか。

どんな話をして、通っていたのだろうか。

ひんやりとした、まるでそれは蛇の体温のようなこの場所で

彼女は何を

誰のことを考えていたのだろうか。



大木は大理石の柱にもたれかかる。

やるせない思い

失ったものは大きすぎたんだ、と



気づいたのは今更で





あの日、滅多にそんな顔をすることのない彼女が

目を細め、女神のように微笑んで

そしてその口で紡いだ言葉は、今はもう無き形崩れた果ての感情

もう手に入らない、遥か遠くの



「 好 き 」



僕もだよ、パンジー。

けれどもう、僕にはそれを言える権利さえ無いんだ




守ると誓ったはずなのに

君はもう、何処にもいない

君と一緒に亡くした

あの感情よりも遠く



守り切れなかった約束

君はそれを恨んでいるだろう?

僕に好きだといった君

僕だけの、君



それなのに、そんな大切な君一人さえ


守り切れなかったこの僕を





       

―――飛  散  し  た  約  束

       




もう拾いきれないボロボロになったそれを

もう見えないほどに砕け散ったそれを


それでも僕は掻き集め続ける



遅すぎたと、解ってはいる、けれど。